彼岸花と稲穂
今日は秋分の日。ちょっと山手の棚田がある所に行けば、稲穂がついた棚田の畦に彼岸花が咲いている。
稲穂の黄色と真っ赤な彼岸花のコントラストが美しい。もう稲刈りの作業をしている所もあった。福岡では、うきは市の棚田の「彼岸花めぐり」(9月18日~23日)が有名である。秋分の日よりちょっと早く満開の時期が来たようだが、まだまだ綺麗に咲いている所もある。
彼岸花と言えば、毎年不思議に思うのだが、数日でぐっと伸び、ちょうど秋分の日に合わせて真っ赤な花を咲かせる。そして葉は見たことがな い。別名がたくさんあって、「ハミズハナミズ(葉見ず花見ず)」や「はなしぐさ(葉なし草)」と呼んでいる地域もあるようだ。花が先に咲いて後で葉が茂るという植物はたくさんある。たとえばサクラやコブシなどである。
ここにみごとな彼岸花の「戦略」がある。それは、一年間をかけた戦略になる。
彼岸花の地下にはスイセンのような球根がある。ここに「栄養の貯蔵庫」があり、栄養をため込んでいる。だからこそ、あんなにスルスルと勢いよく花茎を伸ばすことができる。
花が終わると、今度は葉が伸びてくるのである。このスクスクと伸びた緑の葉のままで、冬を越す。周りの植物たちは、当然のこと枯れてしまっている。光は、たっぷりとひとりじめである。翌年の春までは、せっせっと光合成をして、地下の「栄養貯蔵庫」にたんまり栄養をため込むのである。
そして、周囲の植物たちが、春先に芽を出し、夏にかけて「光り取り競争」を展開する頃には、葉を枯らし、夏の休眠に入り、秋雨をたっぷり含み、そして「その季節(とき)」を待つ。
この貯蓄する季節(晩秋から春)と、貯蓄を使いはたし消費する季節(夏から秋)と完全に分離した生活スタイルこそ、彼岸花の見事な戦略なのだ。
これを知ると、彼岸花のあの燃え立つ赤さは、より鮮やかさを増して見えてくるのでは・・・。
教育者の「東井 義雄」氏の詩にこんなものがある。
何日から彼岸に入るのか
人間が 忘れていても
決して 忘れることなく
必ず 咲き出してくる
彼岸花
地の底から燃えあがってくるように
突如 咲き出てくる
血の色の
彼岸花
人間が忘れ去ろうとしている世界を
これを忘れさせてなるものかというように
彼岸花
その燃えるような 血の色。
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